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| 未年の年頭に |
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| 林敏彦 スタンフォード日本センター理事長 |
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年は往き、年は来る。人も往き、人は来る。大学という世界に暮らして、いつの間にか35年経った。初めは弟や妹のようだった学生も、自分の子供と同じ歳になり、やがてもっと幼くなった。今は姿の見えない何百人もの学生が日本のどこかで放送大学の私の話を聴いてくれている。 つたない思いながら一生懸命綴った本も20数冊出版した。自分の年齢と同じ数だけ本を書いた歴史家の大先輩には及ぶべくもないが、それでも新聞原稿まで含めれば何百万人もの人が私の書いたものを目にしてくれている。名刺を整理するようになって既に5千人ほどの住所録ができてしまった。 民主主義は「少数の人を短期間だますことはできても、多数の人を長期間だまし続けることはできない。」という原則に基づいているという。これを逆に読めば、多数の人の前に長期間さらされる人は、うそをつけないということになるだろう。身を飾ることも、背伸びすることもできず、裸にならざるを得ない。 スタンフォード大学の経理原則についてオンライン講習を受けた。全体を通じて強調されているのは公的存在としての大学の使命である。この原則から言えば、授業も、論文や本の出版も、学外での講演も、シンポジウムへの参加も、TV出演や新聞への寄稿も、すべて公刊活動として、大学教員の本来業務に当たるという。そこには、狭隘なジャーナル・アカデミズムとは異なって、社会に開かれた大学の使命が実に明快に示されている。 結局振り返ってみると、私の仕事も人前に身をさらすことだったのだろう。 今年は未年。私の年だ。羊には闘争心も力もないが、また新しく人と会い、人と話せる。それはそれで幸せなことだと思っている。 |
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