スタンフォード日本センター
コラム English
 
コンビニのレジと「国ナビ」
桜内文城
スタンフォード日本センター リサーチフェロー
新潟大学経済学部助教授


現代はとても便利な時代である。24時間、いつでもコンビニに行けば、欲しいものはそこそこ手に入る。そして、会計のレジは、店長でもアルバイト店員でも、誰が打っても入力さえ間違えなければ、早く正確に計算され、お釣りが返ってくる。コンビニごとに酒類取扱があったり、季節商品の入荷が早かったり、その品揃えと便利さは異なっても、基本的なサービスは変わらず安定している。それを支えているのがレジのPOS(point-of-sales system:販売時点情報管理)システムである。

同様のことが国家経営にもいえるのではないか。国家の主権者(共同所有者)であり、お客さまでもある国民が、納得できる政府サービスを得るためには、運営資金の予算決算管理が迅速かつ正確に行われるべきである。すなわち、税金の使われ方が、その意思決定を行う人が変わろうが変わるまいが、誰もが納得できる透明性や公平感があり、満足できるようなものであることが重要である。しかし、これまではレジのような会計の仕組み(すなわち、公会計制度)が整備されておらず、プロの店長を自認する人たちによって、ようやく支えられてきたに過ぎなかった。ただ、そこで伝承されてきたのは、店長の役得の仕方や隠れ借金に関する秘伝の技でしかなかったということが今では広く知られるところとなっているが。

そこで最近、私事ではあるが、志を同じくする方々と一緒に作り上げたのが、通称「国ナビ」(自治体バージョンは「自治ナビ」)である。「国ナビ」は、公会計システムの中核として、政府の財政及びその運営の状況をできるだけ正確かつ包括的に把握し、より効率的な予算編成を実現することができるよう設計されている。
これを導入すれば、複雑な入力や仕訳は不要、従来と同様の予算決算管理の数値を入力するだけで、政府活動に関する各種財務諸表を容易に作成することができる。また、予算編成上のシミュレーションを通じて、現役世代の受益と負担の関係を把握できる他、将来世代への負担の先送りを許す財務指標の上限目標値等を予め設定することが可能となる。その結果、・その政権がどのような分野に重点的に資源投入しようとしているのか、・我々現役世代の負担はどう変わるのか、更には、・我が国にとって大切な将来世代に対して、どれだけの負担の先送りをお願いすることになるのか、総理大臣の意思決定とその責任が国民の前に明らかとなる。


更に、各政党のマニフェストを「国ナビ」でチェックすることを通じて、選挙後の政権によって、政府の財政状況がどのように変化するのかということも事前に明らかとなる。選挙の結果が私たち国民の受益と負担にどのような影響をもたらすのか、将来の国民の生活基盤をどう左右することになるのか、といった点を見極めつつ、投票所に向かうことが可能となる。そう遠くない将来、そのような仕組みが順次導入されていくことを期待している今日この頃である。