スタンフォード日本センター
コラム English
 
「表現の寿命」
菊池尚人
スタンフォード日本センター リサーチフェロー
社団法人音楽制作者連盟 研究員

世界的に音楽が売れてません。
ここ10年くらいのロックというかポップミュージックはすごくないと私自身は思ってます。好みもあるでしょうが、世界的にとんがってなくなったと思います。
何度も何度もロックは死んだと言われてきましたが、最近の有様はそんなにカッコよくなく、ただしぼんできただけのように思います。
Jazzも100年前は、一番売れるレコード・ジャンルでした。
クラッシックも、モーツアルトの時代は、時代の先っぽだったと思います。
どちらも社会的影響は未だに大きいです。
ただ、時代をえぐる力はないと思います。
えぐる力がなくなると伝統芸能に近づきます。
ロックも50年たって伝統芸能化してきたのだと思います。

日本ではポップミュージックだけでなく、アニメもゲームも売れなくなっています。
映画、テレビ、マンガ、アニメ、ゲームと続いた戦後のポップカルチャーは、全て、シュリンクしています。
表現は時代の香りや色気が出るものなので、社会が変われば表現の寿命も尽きると思います。
表現そのものが歳をとったのだと感じます。

コンテンツ政策という掛け声のもと、人材育成やファイナンスの大切さが政府により提言されています。
でも、具体的施策で解決できるレベルの話ではないと感じます。
政策をめぐらしても本物のムーブメントは出てきません。
ビートルズもピストルズも誰かが狙って当てたのではなく、時代のうねりが創ったものです。

だからなんなんだと言われると少し困惑します。
変えよう、生み出そうと努力する姿が時に美しいのは私も感じます。
立ち向かわないでどうすると迫られると、ごめんなさいと謝るしかありません。
ただ、寿命や道理ってもんは、そんなに変わらないと思います。
声高に言うことでもないでしょうが。

う〜ん、でも、後ろでドアーズの“Break on through”, “light my fire”がかかってます。
心の底では変えられると、私も信じたいみたいです。