スタッフ・フェロー English
 
菊池尚人
スタンフォード日本センター リサーチフェロー
社団法人音楽制作者連盟 研究員
 ここ数年、主に音楽を中心として、デジタルの著作権に取り組んでおります。
ファイル交換ソフトであるナップスターが音楽ビジネスの脅威になったり、アップルの音楽配信サービスが多くのインターネット利用者で話題となったりと、音楽とITは結構、近い関係にあると思います。着メロもその一つでしょう。
ただ、インターネットラジオを開局しようとしても権利処理が大変煩雑なように、必ずしも制度やビジネスと技術の歩調があっていません。

デジタル化は、編集と複製を飛躍的に簡単にしました。インターネットは発信機会を無限に拡大しました。音楽は身近な存在ですし、ファイルが軽いので、様々なコンテンツの中でも真っ先にIT化の影響を受けてきたのだと思います。

デジタル化、インターネット化の流れを受け、日本では毎年、著作権法の改正が行われています。アメリカのデジタルミレニアムアクトやEUの関連ディレクションなど、世界中で制度が調整されています。欧米では、著作権や著作隣接権を処理する代理人 (エージェント)ビジネスも拡大しています。

一般的に著作権問題というと、現状重視でビジネスよりのコピーライトと、それに反対するコピーレフトの見解の相違がクローズアップされます。配分比率という市場(パイ)の切り分けルールが注目を集めることもあります。また、リミックスやパロディの正当性が取上げられることもあります。

IT化は世界中で起こっている大きな流れです。著作権の問題は、その急激な技術の進歩に、従来の社会ルールが変更を迫られている一例です。これまであまり省みられることのなかった、利用者、オーディエンスの地位を位置付け直す必要があると思います。また、知識や成果を社会で共有するのか、個人や企業が私有するのかも重要な問題だと考えます。物権を中心に成立した近代法制度と、情報という無体財産の関係を見直す必要が生じるかもしれません。制作がもっともっと拡大するように、資金循環を検討することも必要です。そもそも、著作権制度は創造とどれくらい関係があるのか、原点から再考してもよい段階だと思います。

個人的には、技術が社会や表現可能性をダイナミックに変革する中で、見たこともない天才が次から次に現れるのを待ちわびています。そろそろ、その兆しがあってもよい頃かと思います。
心配なのは、私自身が新しい才能に鈍くなりつつあると感じることです。